石川 光久(いしかわ みつひさ)
株式会社プロダクション・アイジー 代表取締役社長
1958年10月東京都生まれ。
Production I.G.,LLC(米国)の代表取締役を兼務。
大学卒業後、竜の子プロダクションに入社。
1987年、同社より独立し創業。
プロデューサーとして数多くのアニメーション映画、ゲーム制作などを手がける。
主なプロデュース作品として、劇場「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」('95)、劇場「BLOOD THE LAST VAMPIRE」('00)、等がある。
ヒーローズの創刊で感じたことは?
まず、アニメーションにおいても漫画においても時代の流れというものがあって、そこに対して逆張りするということは本当に難しい。しかし時代に逆張りすることで大きな可能性も見出せると考えています。これは、アニメーションが低迷するなかで会社を興し、そして今年で24年目を迎える当社と同じで、ヒーローズも出版業界が廃刊に向かうなかで新創刊する、つまり時代に逆張りすることで新たな成長機会を見出しているかのように見えるのです。
また、世の中に対してど真ん中の「ヒーロー」をゼロから作るということも本当に難しいことで、当社も数年前から取り組んでいましたが、今はオリジナルの原作とアニメーションの技術を組み合わせることで新たなヒーローを生み出したいという考え方にシフトしました。それほど難しいことにヒーローズは挑戦したのです。
ヒーローズで興味を引く作品は何ですか?
やはり「ULTRAMAN」です。
第一話でウルトラマンが出てこない。ウルトラマンという「誰もが知っているヒーロー」が忘れ去られたという設定、読者の期待値を上げる様々な伏線。そして、ウルトラマンの心情にまで入りこんだ描写。これが漫画で描くウルトラマン、漫画でしか描けないウルトラマンなんだと感じました。「ULTRAMAN」を読んで、漫画という表現手法の素晴らしさを再認識できましたし、ウルトラマンが持っている普遍的なテーマを改めて感じる事ができました。また、「ドラゴンエフェクト」の高い画力に惹かれました。絵柄が個人的に好みというのも大きいです。坂本竜馬をこんな形で蘇らせるのかという意外性のあるストーリー、そして竜馬という日本の歴史的人物を日本の漫画家ではなく、敢えて韓国の漫画家さんに描いてもらうという試み。ヒーローズは国境も越えていくのかということに本当に驚かされました。今後の展開に期待しています。
ヒーローズの取り組みをどのように見ていますか?
セブン-イレブンやパチンコホールで展開し、流通から独自性を打ちだし、プロモーションには今一番注目を集めているアイドルAKB48を起用し、ユーザーへ積極的なアプローチをする。ヒーローズは「雑誌」という媒体に対して、真正面からチャレンジしていると感じました。今後はこれをどのように継続させるのかが問われてくると思います。私自身、継続するのであれば高い志を持って徹底的に継続させると、その一方、ビジネスは100%成功するものではないので時代がズレるなど何かあったときは潔く撤退するという2つの考えを持っています。保守的に思われるかも知れませんが、「ヒーローズ」にも撤退するという勇気を心のどこかに持って頂くことで、フィールズグループが大切に継続させてきたテクノロジーとクリエイティブの融合や、そこから生まれるシナジーがさらに強く、そして大きく前に進むのではないかと感じています。
石川社長にとってのヒーローとは何ですか?
当社がアニメーション制作会社ですから目指すヒーローとしては「機動戦士ガンダム」のようなロボットとか「宇宙戦艦ヤマト」のような戦艦とか、当然ウルトラマンのようなヒーローものが期待されています。
ただ、私自身はヒーローとは「人」だと思っています。例えば、子どものときに観た「あしたのジョー」のように、世の中に打たれながらも愛に対して一途だったり、男としてのロマンとか、かっこよさが凝縮されていて、これが幾つになっても自分にとってのヒーローのように感じています。そして、この子どものときに観たものや、好きだったものを大人になっても失くさず持ち続けること、知識でなくハートで何かを作りたいと努力したとき、それが初めてコンテンツの源泉となって、あとは2次的、3次的に転がって、どんどん一人歩きして人々の心を揺さぶるのではないかと考えています。
今後のヒーローズについてどのようなことを期待していますか?
私も上場会社の経営者として、アニメーションを通じて多くの人々に感動を与えたいと幾多の挑戦を続けていますが、フィールズグループの持っているチャレンジ精神にはいつも感心させられます。ヒーローズは、雑誌のみでは赤字だと思いますが、当然雑誌以外も狙っていると思いますし、目先の人気だけではなく、さらにその先を見据えて育てていくという姿勢を強く持っていると感じています。そして、進化させてもゴールを設定していないというところに面白さもあると思います。今後、ヒーローズが成功するかどうかは分かりません。しかし、私たちも大きな夢を追い続け、小さな努力を積み重ねることで24年間事業を続けてきました。月並みですが、何事も諦めず、人材を大事にし、クオリティを守り続けてきました。そして、これらの心がけを忘れないことでこの先も事業を継続できるものと考えています。
このような時代だからこそ"攻め"の姿勢を大切にして、「ヒーローズ」を通じて、今後も日本に住む多くの皆さんに勇気と元気を与えて欲しいと思います。