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Expert's View

フィールズへの第三者評価

2014年6月19日

写真:宇野 常寛

評論家
「PLANETS」編集長
宇野 常寛

著書に『ゼロ年代の想像力』(早川書房)。『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)。『日本文化の論点』(筑摩書房)、『原子爆弾とジョーカーなき世界』(メディアファクトリー)。
共著に濱野智史との対談『希望論』(NHK出版)、石破茂との対談『こんな日本をつくりたい』(太田出版)。
企画・編集参加に「思想地図 vol.4」(NHK出版)、「朝日ジャーナル 日本破壊計画」(朝日新聞出版)など。京都精華大学非常勤講師も務める。

おそらくいまフィールズという企業が直面しているのは、21世紀前半のエンタテインメントがどのようなスタイルを取るのかという問題そのもののように思える。

その問題は大別して二つある。一つはインフラの問題だ。戦後のエンタテインメントの歴史とは、すなわち情報環境がより双方向的になっていく歴史だったと言える。

音楽市場で言えばそれは当初は単体で成立していたレコードが、やがてカラオケという二次創作ツールの従属物となり、やがてインターネットの時代にはその存在意義を失っていく過程であり、映像産業で言えば映画からテレビ、そして動画サイトへの流れそのもののことを指す。

そしてこの情報環境の変化は間違いなく今後都市インフラの変化を促す。要するにこれから先はカラオケボックス、映画館、ゲームセンター、パチンコホールといった都市の娯楽インフラが先行するメディアの変化に対応した形で変化することが要求され、「エンタテインメントの総合商社」を志向する企業には市場インフラの提案と整備が要求されるだろう、ということに他ならない。

つまりカラオケボックス2.0、ゲーセン2.0、ホール2.0的な娯楽施設の構想が今後フィールズ社に求められるのではないかと個人的には考えている。

もう一つはそのインフラに乗る中身、つまりコンテンツそれ自体の開発である。

日本のサブカルチャーがそのガラパゴス性を武器に、そのユニークさを世界各国のマニアに愛されていればよいという時代は終わりを迎えつつある。いま、日本のエンタテインメントに求められているのは、端的に中流階級が急増するアジアを中心としたグローバル・コンテンツの提供に他ならない。

そして、日本の出版、映像のプレイヤーたちの多くは、その圧倒的に高い制作能力に比して、グローバルな市場を相手にした大規模なプロジェクトをマネジメントする能力に欠けている。私見では、この部分には決定的に「外の血」が入ることなくして強化はあり得ないと思う。

やはりここでも、「エンタテインメントの総合商社」的な性格を持つプレイヤーの介入が大きく貢献することになるだろう。

いずれにせよ、現在多方面に展開するフィールズのコンテンツ制作はこうしたエンタテインメント総合商社への脱皮として必然的な展開だと思われるが、同時にそれは同社的なプレイヤーが既存の業界にないものをいかに補うか、という視点から逆算されている必要がある。

「フィールズにも既存のプレイヤーに劣らないものが制作できる」のではなく「フィールズが介入しなければ立案も実行もできないプロジェクトが大きな存在感を示す」ということが重要なのではないか。

制作能力が大きく底上げされつつあるように見えるこのタイミングだからこそ、10年後、20年後への環境整備とそこから発進させるキラーコンテンツ創りに着手するタイミングなのではないかというのが観測であり、個人的な期待でもある。


(注)本第三者意見は、2014年6月18日に発刊した「2014年3月期 株主通信」にご寄稿頂いた内容となります。