フィールズ デジタルアニュアルレポート2016

特集:フィールズの事業戦略 ~第28回定時株主総会プレゼンテーションより~

余暇を楽しむためのメディアは、時代とともに多様化してきました。もはや一つのメディアをビジネスのプラットフォームとするだけでは、充分な収益を確保し、中長期にわたる持続的な成長を見据えることが難しくなってきています。こうしたなかで当社は、メディアを軸に考えるのではなく、すべてのメディアに展開できるIPを軸としたビジネスモデルを構築し、これを実践しています。

IPとは、『ウルトラマン』や『エヴァンゲリオン』など、エンタテインメントの根幹となるキャラクターやストーリーなどの「知的財産権」のことです。
テレビやゲーム、遊技機など、メディアには必ずコンテンツが必要となります。そして、メディアが多様化するなかで、どのメディアもファンからの支持を集めるために、知名度の高い有力なIPを活用したコンテンツを使いたいと考えています。しかし、知名度の高いIPは希少価値となるため、新たなIPを創り、育てていく努力も求められます。

当社は数年前から多数のIPを取得するとともに創出にも取り組み、IPのビジネスバリューを総体的に高めるクロスメディア戦略を推進しています。ひとつのIPを多様なメディアに展開することで、収益を高めるだけでなく、そのIPの価値をも向上させることができます。さらに、その収益を原資に有力なIPを育成して展開するIPの数を増やせば、クロスメディア展開全体のビジネスバリューを向上させていくことができます。
すでに当社は、各メディアのパートナー企業と協働して好循環のスパイラルを創り出すことでIPの価値を高めるビジネスモデルを確立し、IPを中核とした成長戦略の第一ステージとして実践しています。

図:フィールズのIPクロスメディア展開

そして第二のステージとして、パートナー企業との関係を深め、IPをビジネス化するビジネスプラットフォームを増やす取り組みを加速していきます。良質なメディアとの結びつきは多くの人々が笑顔と感動に包まれて余暇を過ごす機会を広げ、多くのファンの支持によりIPの価値を一層高めていくことができるものと確信しています。

当社が求めるものは、世代やエリアを超えて愛され続けるIPです。そのため第三のステージとして、グローバルなマーケットを視野に入れることは必然の選択肢となります。ひとつのプラットフォームサービスから全世界に同じIPが提供できるSVOD(定額制動画配信)を足掛かりに、中国やハリウッドなどグローバルなプレーヤーとの関係を深め、IPの認知拡大とコンテンツの価値向上に注力していきます。

有力なIPを取得・創出・育成し、その価値を高めることは、世界中の人々に最高の余暇をお届けすることへとつながります。
当社は今後、IPを拡充し、ビジネスプラットフォームを増やし、エリアを拡大する取り組みを加速することで、IPの価値向上と収益の拡大を実現し、世界に存在感のあるIPカンパニーを実現してまいります。

当社が推進するIPのクロスメディア展開について、具体的な事例を交えてご説明させていただきます。

月刊ヒーローズ

当社グループのIP創出の中心的な存在が、コミック誌「月刊ヒーローズ」です。
等身大のウルトラマンを描いた新ストーリー『ULTRAMAN』はコミックの累計販売部数が200万部を突破しました(2016年6月時点)。また、クロスメディア展開を進める『マジェスティックプリンス』は2016年11月に映画公開を予定しています。さらに、同誌の連載作品を中国最大の通信会社チャイナ・モバイルにて電子配信するなど、グローバルなエリア拡大にも貢献しています。
「月刊ヒーローズ」は、キャラクターやストーリーへの読者の共感を確かめながら、映像化やゲーム化によりIPを育成するクロスメディア戦略の中心的な役割を果たし、創刊から5年、着実に手応えをつかんでいます。

IPの認知拡大に向け、フル3DCGアニメーションの制作にも取り組んでいます。アニメーションの世界は、現在CGアニメーションに向かっています。当社は、最先端のデジタルCG技術を有するグループ企業と協働し、劇場公開映画の制作を進めています。
2015年に公開された『アップルシード アルファ』は、「VFX JAPANアワード2016」の最優秀作品賞を受賞しました。また、上海国際映画祭に招待されたことを機に、中国のエンタテインメント企業よりゲーム化や映像配信などのビジネスの提案をいただいています。
当期は、2016年10月にフル3DCGアニメーション映画『GANTZ:O』の公開を予定しています。そして、そのほかにも超大型版権のCGアニメーション化の準備を進めています。

アップルシード アルファ
ベルセルク

映像化を起点にクロスメディア展開を推進しているIPに『ベルセルク』があります。同IPは、緻密な画風と重厚な世界観で海外からも支持を集める優れたIPです。
当社は2012年に3部作として映画化し、その後、ソーシャルゲーム化、遊技機化と展開しました。そして、原作へのリスペクトと作品の可能性から、新たに共同製作のパートナーとしてNBCユニバーサル・エンターテインメントジャパン合同会社や米国のクランチロール株式会社を迎え、2016年7月より新たな映像によるテレビアニメ『ベルセルク』の放送を日米同時展開で開始しました。また、2016年10月には、株式会社コーエーテクモゲームスより、PlayStation®4/PlayStation®3/ PlayStation®Vita用ゲームソフト『ベルセルク無双』の発売が予定されています。

当社は原作をリスペクトし、愛をもってIPを大切に育てるという姿勢で、IPビジネスに臨んでいます。この基本姿勢に、高いレベルで原作を理解しデジタル映像化できる技術力、世界のパートナー企業と協業していけるプロデュース力が加わり、当社が有力IPの取得およびクロスメディア戦略を推進する上で大きなアドバンテージを得ることができるものと考えます。IPの価値を最大限に高めて良質なコンテンツを世界に届ける、当社グループのクロスメディア戦略にぜひご期待ください。

2014年以降、業界団体による自主規制を中心とした規制の波が訪れ、当社の収益の柱であるPS事業はその収益性が低下しています。これに対しPS事業統括本部では、二つの視点から事業基盤の強化に取り組んでいます。

第一の視点は、「シェアを高める」ことです。当社は提携メーカーとともに、当社が総発売元となるブランドにおいて、IPを活用したエンタテインメント性の高い遊技機の創出に注力しています。そして当社の強みである流通を最大限に活かし、シェアの拡大に努めています。

第二の視点は、「利益率を高める」ことです。当社は、遊技機化への適性が高いIPの取得から、IPを活用した遊技機の企画開発、全国のホールと信頼関係を築く流通網、ホール経営のサポートとPS事業に係る一貫した体制を構築し、全業務を連動させて収益の最大化を図ります。

現在、遊技機市場では、実績のあるシリーズ機の導入が進み、市場設置台数の66%がシリーズ機で構成されています。確かにシリーズ機に人気が集まる一方で、ファンは新しいIPも求めています。
当社は、これまで蓄積した流通データをもとにシリーズ化できる有力なIPを調査・取得するノウハウを有し、今後シリーズ化できる有力なIPの戦略的な取得・活用に努めています。そして、提携メーカーとグループの開発会社と協力し、IPを活用したエンタテインメント性の高い遊技機を創出し、総発売元ブランドのさらなるラインアップの拡充に努めていきます。

さらに当社では、ホールとの信頼関係をより強固なものにするために、当社総発売元ブランドを含むあらゆる遊技機の市場データを基に提案を行う「マーケティングレポート」、ホール経営に役立つ情報配信サービス「WE」、より細かなアドバイスを提供する「アドバイザリー契約に基づくサポート事業」などを通じて、当社のPS事業が市場の活性化を伴って成長していけるよう、PS事業の基盤強化を推進します。

この2年、一連の自主規制により、遊技機は射幸性を抑制する方向へと向かっています。これはエンタテインメントを追求する当社の成長機会につながるものと考えています。IPと流通の強みを活かしたPS事業の確立と推進により、厳しい環境を乗り切り、利益の維持とさらなる成長の実現に全力で努めてまいります。

本文中の会社名・商品名・サービス名は各社の商標または登録商標です。